月に一度だけ開く、靴好きが集まるバー
shoes bar ”farfalle”
バーのメニューはひとつだけ。
今夜のメニューは「好きな靴のパーツ」
今日も靴好きが集まって
マニアックなトークを繰り広げているようですよ・・・
ページ一番下のリンクよりご覧ください。※
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バー常連・かつ長田の某靴メーカーの専務。自身も製靴学校で学び、靴作りには並々ならぬ熱い思いがある。
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バー常連・おます今まで履いてきた靴は300足以上の靴マニア。ケミカルから本革まで靴なら等しく愛する2児のママ。
おますブログ「SHOES LIFE NOW」はこちら>> -
オーナー・まきバレエシューズが有名な神戸の某ブランドでMDをしている。靴だけでなく古着など個性的なファッションが大好き。
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アルバイト・あゆまきと同じ会社でオンラインショップを運営している。靴ブランドには詳しくないが店頭で形に一目ぼれして散財するタイプ。
まき:いらっしゃいませ~。今日のメニューは「好きな靴のパーツ」になります。
かつ:元々ヒール高が7cm、9cmが普通っていうエレガンスメーカーで働いていたからヒールの形が好きやなぁ。
踵から地面に行くまでの後ろからと横から見たフォルム・ラインが大好きやわ。
あゆ:後ろからみたフォルムと横から見たフォルムの美しさは両立させるのが難しいんですか?
かつ:もちろん!削り出しに近いからね。
デザイナーさんから、この場所をもっと削ってくれと言われたりするんやけど、メーカー側からしたら、ここ削ったら釘を入れる場所無いですよ、ってなる。
ヒールは釘を何本か打って本体と底と付けるんやけど、釘の入るスペースを極限まで保ちつつ、理想に近づくようにフォルムをそぎ落とす。
ヒールの割れないギリギリの肉厚っていうのはよぉチャレンジしてたわ。
デザイナーさんの望むヒールのフォルムと、靴としての構造を両立させるために、ヒール打ち機のハンマー(※1 ヒールに釘を打つための機械)っていう部品の釘の出る角度を改造したりするんや。僕は特注のハンマー持ってたくらいやねん。
ヒールは理想に近づけて、機械の方を改造するってことやな。
まき:めちゃめちゃマニアックな話(笑)
おます:すごい面白い!
あゆ:(ぽかーん)
まき:ヒールって細ければ細いほど作るのが難しいのよ。
かつ:そうそう。歩くと梃子(てこ)の原理が働くから、ヒールが高いほど強度が無いと取れてしまうからね。めっちゃ難しいねん。
まき:ジミー・チュウ(※2 セレブに大人気イギリスのブランド)とか、いわゆる一流ブランドのハイヒールって技術的にも高いから値段も高いと思うのよね~。
あゆ:ほー、技術代ってことなのか。
まき:もちろんブランド価値ってのもあるけどね。
あゆ:じゃあ、かつさんのグッとくる靴のパーツはヒールの形、ですね?
かつ:そうやな。エレガンスシューズって大体男性のデザイナーが多いんや。女性をいかに魅力的に見せられるかを男性目線でデザインできるからやろな。
みんな:へぇぇ~~。
かつ:ザノッティ(※3 イタリアのシューズブランド)のデザイナーさんにメンズ作らないんですか?って聞いたら、男の足に線いれるの気持ち悪い、言うてたわ。でも、今一番好きなんは紙型(※4 服でいう所のパターン)の踵のトップから小指の方まで行くライン(※5 専門用語は用語集へ!)やな。ハイヒールの踵をホールドしつつ横から見た表情が、いかに女性らしいラインにできるかが楽しいな。
あゆ:す、すみません。ぜんぜん分からないです・・紙型の時点でもう出来上がりの形が見えているってことですか?
かつ:吊り込み(※6 甲皮を底へ纏わせていく作業)の具合なんかもあるけど、だいたいは分かるな。
まき:ところでかつさん、ハイブランドって量産してるんですかね?
かつ:ジミー・チュウとかカオヴィラ(※7 イタリアの老舗高級婦人靴ブランド)とかは工場やろな。
ローフィエラ(※8 世界最大の国際靴見本市)まで行ってオーダーする位のむちゃくちゃマニアックで高級な靴もあるんやけど、職人の高齢化で工場に頼み始めてるところもあるみたいやわ・・。
みんな:なるほどね~。どこの国も技術の伝承って難しいんですね。
あゆ:おますさんは、どうですか?靴のここにキュンとなるってとこあります?
おます:私も最近ヒールの重要さをひしひしと感じてるかな。本格的な革靴ブランドだと、カルミナ(※9 紳士靴を主に扱うスペインのブランド)のように女性らしいヒールがあることで他のブランドとは一線を画しているところもありますから。
あと、モードな感じの靴を探してるとやっぱザラなのよね~。
まき:うんうん!すっごい分かる!ザラ、めっちゃ形キレイですもんね。
おます:そうそう!プラダとかバレンシアガとかのラグジュアリーブランドの木型を石膏取ったりしてるのかな?
でもザラはソールがカッチカチなんだよね。
まき:長時間歩けないんですよね(笑)
おます:あと普通のパンプスやサンダルでもサンローランのオピウムみたいにヒールが面白いだけで、こうも鮮度が上がるか!って感じで。ていうと、やっぱヒールの重要性をひしひしと感じるわ。
まき:ヒールにポイントがあるっていうの、最近の流行ですよね。アッパーはシンプルだけどスカルプチャーヒール(※10 造形のあるヒール)とか。
おます:底周りのデザインって重要よね。
あゆ:なるほどなるほど。じゃ今んとこヒールが優勢ですけど、まっきーさんはどうです?
まき:私はラスト(※11 木型のこと)です!(キリッ)
おます:あー、ラストも捨てがたい!
まき:これは自論なんですけど、ラストが綺麗であることが全てだと思ってるんですよね。
インポートや日本製の靴って甲が薄いじゃないですか?
中国製の靴って甲が盛られてるんですよね。あれが嫌なんですよ。
かつ:分かる分かる。
まき:何回修正依頼しても直ってこない(笑)
かつ:中国の場合、かかとの部分だって伸ばし率がMサイズ一定でボールベース取ったり(※12 これは難しいので用語集へ!)するからなぁ。ほんまやったらサイズ毎に1.5mmづつくらい広がっていかなあかんねんけど、全サイズ同じ大きさやねん。
おます:へぇ~。
まき:だから形があまり可愛くないんですね。
あゆ:例えば22.5㎝でも25.0㎝でも足の前方部分だけが大きくなっていって、踵だけは同じサイズ。
そりゃアンバランスな形になるわ。
まき:中国の靴は1万足とかの量産ベースだからそうなっちゃうんですよね。
かつ:あと、のり引き(※13 靴のパーツを貼り合わせるときの作業のこと)の質が日本とは全くちゃうんや。日本には何種類もあるんやけど中国は少ない。
のり引きの方法も少ないな。
みんな:へぇー。
かつ:ザラの中国産の底がなんでカチカチかっていうと、靴を海外に運ぶとき、空輸やと全然利益に見合わないから船便を使うねんな。
そん時にヨーロッパから日本まで赤道3回超えるんよ。70~80度あるコンテナの中で変形せぇへん硬さで作っとかんと中敷きが浮いたり・靴が笑ってまう(※14 上から見ると靴が足から浮いて見えること)からカチコチにするんや。
(追記:生産拠点から一旦スペインの物流センターに集積された後、各国へ輸出されます。)
みんな:そうなんや!
かつ:チャールズ・アンド・キース(※15 シンガポール発の中間価格帯のブランド)も・・
まき:チャールズ・アンド・キース好き!(食い気味)
おます:形キレイ!(食い気味)
かつ:高く見えて安く作れ、が基本原則やからね。
日本の人はもっちりふわふわが好みやけど、海外はそんな気にせぇへんのよ。
パンも一緒やろ?日本はソフト系・海外はハード系。
みんな:名言キタ(笑)
あゆ:他にも好きなとこってありますか?
まき:材料は合わせ方次第だしな~。
かつ:マニアックなところで言ったら、トゥを彩る靴の周りに付くピース(※16 専門用語は用語集へ!)。スタッズだったり紐だったり・・
底がマッケイ(※17 専門用語は用語集へ!)なのかグッドイヤーウェルト(※18 専門用語は用語集へ!)なのかとか、足を組んだ時にチラっと見える、刻みが入ってるのを緑に染めてるとかそういうところも好きやな。
まき:それはもうルブタン(※19 フランスのラグジュアリーシューズブランド)が極みですよね~。
確かにインソールとかアウトソールの色ってブランドカラー出しやすいですもんね。
あゆはピース分かる?
あゆ:いや、どこ?
まき:この靴の周りにぐるっと出てるところ。
おます:コバ(※20)とかウェルト(※21 専門用語は用語集へ!)のこと?
あゆ:コバは分かる。コバのところに装飾があるってことかな?
まき・かつ:そうそう。爪先から見たときにちょっと飛び出してるところ。
かつ:たった3mm程度のスペースに模様があるんよ。
おます:ウェルトが偽物っぽいと靴が安っぽく見えるんですよね~。
あゆ:アウトソールの色も重要ですよね。私、ファルファーレの底の色がインポートぽくって好きなんですよね。
まき:あのアウトソールもサイドに色付けてるの知ってた?
あゆ:え!?(靴を脱いで見てみる)
ほんまや。サイドだけ色が濃い。
かつ:ガシャン!と型を抜いてから、バフがけ(※22 専門用語は用語集へ!)してサイドに色塗ってるんやで。
あゆ:バフがけの機械、かつさんの工場で見たことあります!靴って細かいところに気を使ってるんやなぁ。勉強になりました!
お。まだまだ面白い話、いっぱいありそうですけどそろそろ閉店のお時間です。
また来月も靴に関するマニアックなお話し楽しみにしていますね。
お越しを心よりお待ちしております。